前回に引き続き、
心躍る筆記具の一つとして、
「シェーファー スノーケル」をご紹介いたします。
過去ブログ『独創的かつ革新的なシェーファースノーケル -前篇-』はこちら >>
今回は実際の2つのモデルを見ながら、スノーケルについて少しでも興味をもっていただければ幸いです。
前篇でもお話ししたように、
スノーケルは16種類の字幅で展開され、非売品のデモンストレーターを含めると14種類のモデル、そしてシリーズ全体で13色におよぶカラーバリエーションがありました。
前回はスノーケルの機構について着目をしましたが、今回はデザインを中心に紹介できればと思います。
まず1本目に紹介するのは、こちらです。
キャップと胴軸はともに樹脂製で、トライアンフ型の巻きペン先が特徴的な「スノーケル ヴァリアント」です。
バーガンディの軸色で字幅のシルク印刷は消えてしまっていますが、XFもしくはFと思われます。
胴軸径は約10.5mmほどで現代の感覚からしてもかなり細身のモデルで、発売当時はメーカーでも一連のシリーズを、”Thin Model(TM)”と呼称していた様です。
総重量は17gであり、
キャップを外した状態ではわずか11gです。
金属製の胴ねじから滑り止めの首軸の溝を経て見える精緻なバイカラーの染め分けで構成されたペン先までのデザインは、一分の隙もなく、惚れ惚れするほどの完成された美を感じます。
ペン先のサイド部分の流れるようなカットと、ペン芯のカーブに添って収められているスノーケル管からは、はるか昔のペンであるにも関わらず未来を感じられ、現代のペンと比較しても、秀逸なデザインです。
スノーケルが発売された1952年といえば、万年筆の王様といわれる「モンブラン 149」の発売年でもありますが、お国柄の違いも含め、好対照をなすデザインです。
素材も当時の149がセルロイドであるのに対し、スノーケルはプラスチックの射出成型で作られています。
ペン全体を見た時には、特徴的な外観を構成する巻きペン先がまず目を引き付けますが、このペン先は見た目のインパクトもさることながら、実用性も兼ね備えています。
シェーファーで巻きペン先が採用されたのは1942年発売のトライアンフからですが、このモデルからペン先先端付近がやや上向きに反らしてあり、現在でいうウェーバリーのような形になりました。
その後のモデルでは、この「反り」はシェーファーの伝統といえるほど多くのモデルが反っています。
この反りのおかげか実際に使用してみた感想としては、細字のペン先としては紙への当たりが柔らかく滑らかに感じます。
もちろん「反り」の具合やペンポイント形状に左右はされますが、巻きペン先はいわゆるガチニブと言われるようなかなり硬いペン先の部類に入ります。
しかし、その硬さを感じさせない軽やかな書き心地が特徴的で、一種癖になるような、そんな面白みを持っています。
2本目に紹介するこちらのモデルは、ヴァリアントと同じく、キャップと胴軸はともに樹脂製で、象嵌のように埋め込まれたペン先が特徴的な「PFM-Ⅲ」です。
グリーンの軸色で、字幅のシルク印刷はこちらも消えてしまっていますがXFと思われます。
PFMは、「Pen for Men」の頭文字をモデル名にしたもので、文字通り男性のための万年筆で、胴軸径が約12.5mmと太めの存在感のあるボディになっています。
1959年に発売され、スノーケルの改良も図られたモデルになっています。
見た目に反して重量は軽く総重量は21gで、
キャップ外した状態では13gです。
バリエーションは装飾、ペン先の材質によってⅠからⅤの5種類に分けられ、型番の「Ⅲ」は樹脂製のキャップと軸に金ペン先がついたモデル。
字幅は8種類、カラーは上記のグリーンを含めた5色展開でした。
胴軸から首軸にかけて同色の樹脂でそれぞれ射出成型で作られたボディは、落とし込み勘合式のキャップになっていることもあり、一体的なシンプルなデザイン。
シンプルなモノカラーのペン先の中に覗く樹脂色がかわいらしいです。
スノーケルの巻きペン先と同じく特徴的な外観を構成するインレイニブ(象嵌ペン先)は、PFMではじめて採用され、その後のインペリアルやタルガ、レガシーなどを通じて、現在まで製造され続けており、ホワイトドットにならぶシェーファーの代名詞といえます。
3つの爪で固定するキャップ勘合と角ばったばね式クリップも、このモデルから採用されており、その後のモデルへ引き継がれていきます。
その意味でもPFMはブランドを象徴するモデルです。
ペン先自体の書き味はスノーケルと似通った部分がありますが、若干PFMの方が柔らかさがあり、軸の太さと相まってゆったりとした書き心地を覚えます。
軽くて太いという軸が個人的にとても好きなので、スノーケル式ということを抜きにしてもよいバランスのペンとして作られています。
2つのモデルを紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。
画像のように、同じスノーケル式ではありますが仕上げには多く違いが見られます。
紹介したモデル以外にも幅広いバリエーション展開が行われましたので、まだまだ書ききれないという気持ちではありますが、文章がどこまでも続いてしまいますので、今回はここで筆をおこうかと思います。
なお「スノーケル」と「PFM」のどちらも非常に魅力的なペンですが、シェーファー自身が1957年にカートリッジ式の万年筆を発売したこともあり、段階的にラインナップは縮小されていきます。
タッチダウン式はインペリアルへ引き継がれしばらく製造が続きますが、スノーケル式については、残念ながら1960年代にはすべての製造が終了してしまいます。
この「独創的かつ革新的な」万年筆たちが、ボールペンとの競争の中で10年以上の長きにわたって製造されたことで、スノーケルは幻のペンではなく、今も見つけることができるペンとなっています。
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余談ですがPFMについては、1963年に行われた外国万年筆の輸入自由化に伴い、若干量が日本国内にも正規輸入されています。
1969年当時の輸入代理店の価格改定表に「PFM-Ⅴ」が12,000円と記載されています。
インペリアルより安い価格なのは、現代から見るとかなり不思議です。
このような複雑な機構の万年筆は、今後はまず市販はされないことでしょう。
機会がございましたら、是非お手に取ってご覧いただければ幸いです。
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参考サイト
Jim Mamoulides(2001).”The Snorkel: A Sheaffer Innovation In Filling”.PenHero.com.
https://penhero.com/PenGallery/Sheaffer/SheafferSnorkelGuide.htm,2023年5月30日閲覧
Jim Mamoulides(2016).”Sheaffer Snorkel 1952-1959″.PenHero.com.
https://penhero.com/PenGallery/Sheaffer/SheafferSnorkel.htm,2023年5月30日閲覧
Jim Mamoulides(2002).”Sheaffer PFM: The Pen For Men 1959-1968″.PenHero.com.
https://penhero.com/PenGallery/Sheaffer/SheafferPFM.htm,2023年5月30日閲覧
F.G. Thomas.”Fifty Years of Sheaffer Fountain Pens 1953 – 2003.”.sheaffertarga.com.
https://www.sheaffertarga.com/Sheaffer%201958%20to%202003/Sheaffer%20Pen%201958%20to%202003.html,2023年5月30日閲覧
F.G. Thomas.”WALTER A.SHEAFFER.”.sheaffertarga.com.
https://www.sheaffertarga.com/Sheaffer%20History/History%20of%20sheaffer.html,2023年5月30日閲覧
日本筆記具工業会,”<万年筆の歴史>詳細年表”.日本筆記具工業会.
http://www.jwima.org/mannehitsu_web/01rekishi/rekishi_nenphou.html,2023年5月30日閲覧