あるボールペンの独白(ペリカンK400ホワイトトートイス)

2010年02月01日

私とご主人だけの幸福な時間はずっと続くはずだった。
あいつがこの家に来なければ・・・ペリカン ボールペン スーベレーン K400 ホワイトトートイス

頭に輝くホワイトスター。
黒光りする大きなボディー。
書き応えのありそうなペン先。
憎たらしいほど堂々とした姿。
誰もが憧れるという万年筆・・・
少し前に、ご主人のお父さんが亡くなって、
そこから引き取られてきた。

あいつが来てからというもの私の出番は減った。
特に家で手紙を書くときはあいつの出番だった。
ご主人はあいつを手にすると
懐かしそうな、ちょっと照れたような、
嬉しそうな・・コロコロいろんな表情を見せた。
正直、悔しかった。
あまりに悔しくて、
あいつに向かって「何であんたばっかり!」と怒鳴ったこともあった。
すると、あいつはいつも通りの穏やかな表情で
「お前さんにもいつか分かるよ」と、言うだけだった。
私は「分かってるわよ。あんたが有名で、
 ご主人のお父さんの思い出の品だからでしょ!」と言ってやったっけ。
でも、あいつはゆっくり首を振ると、
「お前さんにも、いつか、分かるよ。」ともう一度穏やかな声で言った。
そのときの私にはさっぱり意味が分からなかった。
だけど、あいつの表情を見ていたら、それからは以前ほどの苛立ちはなくなった。

・・・あれから、ずいぶんと時が過ぎ、ご主人との別れが訪れた。
たくさんの幸せな思い出が、ある。
私はご主人の娘にもらわれることになった。
(ちなみにあいつはご主人の息子にもらわれた。)
新しいご主人は、ずいぶんと私に優しくしてくれる。
ようやく、あの時の言葉の意味が分かったような気がする。

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