一昨年、
「ペリカンが日本の漢字に適した筆記が出来る日本仕様のペン先を製造している」
という話が出回り一時期、話題となりました。
当店にも
『日本向けペン先を探しています』
『日本向けペン先ですか?』
というお問い合わせが多く寄せられました。
その個体は通常のペン先と混ざって各販売店に入荷するという事で、
求める字幅のその個体を探すために、
当店在庫全てのご試筆をご希望されるお客様が多くご来店されました。
メーカーへ事実確認をしたところ
『日本仕様のペン先は存在しません。
過去に製造されたこともありません』
との回答でした。
一瞬、
「万年筆大国ドイツの大手メーカーであるペリカンが、
我々、漢字を書く日本人のためにペン先を調整している?!」
と、夢のような話が脳裏をよぎりましたが、
その日本仕様のペン先の個体は幻となりました…。
恐らく「個体差」のことを示した、
販売員のセールストークから出回ってしまった情報かと察しています。
例えば『ペリカンのFの中でも比較的細めの個体なので、漢字にも適していて使いやすそうです』が、
いつの間にか『日本仕様のペン先』に変化してしまったのでは無いかと予想しています。
ペリカンのペン先を画像で紹介します。
EF
F
M
B
字幅が太くなる程、徐々にペンポイントがペン先に沿って楕円になっていきます。
実際、筆記をしてみると違いはどうでしょうか…。
今回、試筆に使用した個体は全て新品ですが、
この個体に関してはEFよりもFの方が若干細く見えます。
また、上下の字幅よりも1個飛ばしになると字幅の違いがはっきりとします。
ご覧の通りペリカンだけでは無く、
特に舶来の万年筆は同じ字幅でも「個体差」が必ずと言ってもよい程あります。
各字幅ごとにペンポイントに使用されるイリジウムの量は決まっていますが、
成形された時の微妙な形状で実際筆記した時の太さに微妙な違いが出来ます。
それは、それぞれの国柄やその国の人柄の特徴が出て万年筆の面白い一面でもあります。
特にイタリアは同じモデルでも「細字より中字の方が細い…」という事が普通にあります。
そう考えると国産は個体差が少なく、一定の基準が守られている…
我々日本人の正確さと、繊細さ、それに伴い求める基準の高さが納得できます。
舶来の万年筆を選ぶ際は許容の気持ちを少し広めに…
万年筆という道具の不完全であるからこその魅力。
その不完全さの中に見出す魅力を感じることが醍醐味とも言えるかもしれません。
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