日常の中の万年筆

2014年11月24日

先日、横浜にある文学館に行ってきました。

目的は、「須賀敦子の世界展」です。
神奈川近代文学館にて

須賀敦子さん(1929年~1998年)は私の好きな作家の一人で、

自身が29歳から42歳までを過ごしたイタリアでの生活についてのエッセイや、

イタリア文学の翻訳を主に手がけた人です。

私は本の題名に惹かれて手に取ったのが最初だったのですが

その情景が頭に浮かぶような、静かで繊細な描写に一気に引き込まれました。

今回の展示会では、須賀敦子さんの幼少期からイタリア滞在時代、

その後日本に帰国してからの写真や須賀さんの愛読書が数多く紹介され、

とても充実した内容でしたが、実際に須賀さんが使用していた

筆記具も展示されていました。

・パーカー デュオフォールド マーブルレッド 万年筆

・モンブラン 164 ボールペン

・ブロッター(メーカー不詳)

デュオフォールド 初期型(1990年代)

長い世代で愛され続けているデュオフォールド。

適度な軸の太さで握りやすく落ち着いた深い赤のマーブル模様が女性らしい

華やかな印象を持つペンです。

定番のボールペン

164を愛用していた事と合わせて、シンプルで実用性のある物を

好んでいたのではないでしょうか。

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その他の展示品で興味深く感じたのが、須賀さんが実際に家族や知人に送った

万年筆で書かれた手紙の数々です。

相手に言葉を伝える手段がメールがほとんどの今、「万年筆で手紙を書く」

というと特別な行為に感じ、書く紙の種類やインクの色を吟味し、

間違いのないよう緊張感を持って綺麗に書こうとする方も多いと思います。

もちろんそれは手紙を書くうえでの楽しみのひとつでもあるのですが、

日常に万年筆が溶け込んでいた頃の手紙は少し違いました。

飾り気のない便箋に、ブルー系のインクで書かれた手紙の文面は

間違えた箇所は直接塗りつぶしたり、線を引いて訂正したり

文の途中に吹き出しを付けて言葉をつけ加えたりしていて、

全く気取ったところのない物でした。

でもそれはそれで、書いた人の心の変化や感情が紙の上に表れているようで

とても自然に感じました。

自分の好きな作家が実際に使った万年筆を目にして感慨深かったですし、

時代や人によって様々な万年筆の使い方があるとあらためて実感し、

面白く感じた一日でした。

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