過去に一度、セーラー万年筆 長刀研ぎについて、
長刀研ぎの由来と旧型の長刀研ぎについてお話をさせていただきました。
前回説明のおさらいですが、旧型の長刀研ぎは「いわゆる旧型の長刀研ぎは、現行品と比べエッジが立っていない少しごつごつとしたペンポイントが多い印象」です。
今回は、新型(現行品)に着目をして、その画像を見て頂き、新旧長刀の比較をします。
なお今回は中細字の現行品を用意しましたが、旧型長刀は字幅の刻印がなく、正確な字幅は不明です。
そのため、字幅ごと時代ごとの厳密な違いではなく、中細字の現行品を例にとって、「長刀研ぎの形状について」の大まかな比較を行います。
予めご了承くださいませ。
前回の記事-其の壱-を引用すれば、長刀研ぎペン先の特徴は、
・通常品と比べて長く大きなペンポイント
・刀のような独特な形状
・縦横の描線が大きく異なる
・とめ、はね、はらいがしっかり出る
というのが長刀研ぎの一般的な説明となりますが、画像でご覧頂くと、新旧の差は一目瞭然で、
今までの長刀研ぎとは大きく形が違うことがお分かりいただけるかと思います。
さぁそれぞれ見ていきましょう。
▪旧長刀
ペンポイント側面から見ると、多数の面によって構成されているという具合。
上から見たペンポイント幅は、根元から先端にかけてほとんど変わらず、先端で絞りこまれる。
紙面に当たる面は、先端は少し狭くなっていますが、根元から先端にかけてあまり変わらないように見える。
▪現行エンペラー(中細字)
ペンポイント側面から見ると、角度は45度に近く、ほぼ真直ぐに切り落とされたかのような具合。
上から見たペンポイント幅は、根元すぐのところから絞られはじめ、先端にかけて一気に絞り込まれる。
それに伴い、ペンポイント自体の長さも旧来のものに比べて短め。
紙面に当たる面は、先端にかけてゆるやかに狭くなっていますが、幅自体がやや狭く見える。
ペンポイント側面から見た図が一番、新旧の違いが顕著です。
非常に個人的な感想ですが、現行品をはじめて見たときには、ズームと長刀研ぎのあいのこみたいだと感じたことを覚えています。
ひとつ前の現行品の長刀研ぎペン先と比較しても違いが見えてきます。
▪ひとつ前の現行品
ペンポイント側面から見ると、細長くかつ連続した曲面という具合。
上から見たペンポイント幅は、根元から中腹にかけてはペン先のカーブに沿っており、中腹から先端にかけてぐっと絞り込まれる。
紙面に当たる面は、先端にかけてゆるやかに狭くなっているように見える。
そして当然ではありますが、ペンポイントの違いにより、描線にも違いが出ます。
以前の長刀研ぎの場合は、「とめ、はね、はらい」についてはやはり特徴的でしたが、縦横の描線の違いは、そこまで顕著には見られませんでした。
それに対して現行の長刀研ぎは、特に中細字において顕著ですが、縦横の描線の違いがより強調され、それに伴い、「とめ、はね、はらい」も強調をされています。
以前の長刀研ぎが「シャリシャリ」という書き心地とすれば、現行品「シャキシャキ」という塩梅でしょうか。
よりエッジの立った、メリハリのある書き味が特徴的です。
新旧の長刀研ぎでは書いた感想も、実物のペンポイントの比較にも大きな違いがみられますが、新旧いずれでも、寝かせれば太く、立てれば細く書くことができ、
ひねりに対しても掠れることない書くことができるという点は共通しています。
両者の違いを際立たせるのは、ペン先を真っすぐおろした時の縦線の細さで、それが、現行長刀研ぎのわかりやすい特徴であるといえます。
それでは、実際に書いたものを見ましょう。
▪現行長刀筆記
※イロフル、ペリカン/ロイヤルブルー使用
▪旧長刀画像
※トモエリバー、ペリカン/ロイヤルブルー使用
▪現行長刀筆記 縦横違い まっすぐとななめ
※イロフル、ペリカン/ロイヤルブルー使用
条件等が異なりますので、画像では少しわかりづらいかもしれませんが、雰囲気をお伝えできているかなと思います。
以上が、新旧の長刀研ぎ比較となります。
最後に特殊な例として、「プロフィットスタンダード21」の長刀研ぎを、長原幸夫氏に6年ほど前に私物を研ぎなおしていただいたものがあります。
メーカー出荷時の純正でなく中型ペン先ということもあり、厳密な比較はむつかしいですが、ちょうど、一世代前と現行品の長刀研ぎの過渡期という感じがあります。
筆記描線はかなり細めの長刀になっています。
参考程度にご覧いただければ幸いです。
▪中型ニブ長刀研ぎ
▪中型ニブ長刀研ぎ筆記
※イロフル、ペリカン・ロイヤルブルー使用
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こうして二世代前→現行→一世代前→過渡期?と、いくつもの長刀研ぎをご覧頂きましたが、一口に長刀研ぎといっても大きく違いがあることがお分かり頂けたかと思います。
おおよそ30年前に長原宣義氏が復活させた長刀研ぎは、その息子の長原幸夫氏に引き継がれ、そして、現在のセーラー万年筆の職人たちへと引き継がれてきています。
数多く作られてきた新旧の長刀研ぎには、様々な形があります。
そもそもが、職人の手によって一点ずつ研ぎ出されるペンポイント、人の手から生み出されるからこそ、生まれる違いやブレがあり、また改良と試行錯誤を繰り返して、新たな長刀研ぎが形作られてきました。
個体差も大きく、時代によってもさまざまな姿を見せます。
現代の万年筆は、嗜好品としての側面が強い物です。
新旧のどの形状が好みかも使い手の嗜好の違いによって異なります。
現行品とは形状の異なる旧型の長刀研ぎの人気は年々高まり、少しずつ神格化されているようにさえ感じています。
しかし、新旧のどちらかの長刀研ぎが優れているというわけではなく、それぞれ違ったよさがあると、私は考えています。
拙い文章ではありますが、このブログを読んでいただくことで、単にどの時代が好い、悪いと決めるのではなく、いろいろな長刀研ぎを実際にお使いになっていただいて、個体差も含めた、その時代時代の長刀研ぎを楽しむということの一助になれば幸いです。
私はどの時代の長刀も好きですが、最後に掲載した研ぎなおしていただいた長刀研ぎに手が伸びることが多いような今日この頃です。
「長刀研ぎ」を語るのシリーズはこのあとも続きます。
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