唐突ではありますがみなさまにとって
「好い筆記具」とはなんでしょうか
書きやすいこと手に馴染むこと
長く寄り添えること
あるいは美しいデザインであること
様々な意見があるかと思います
その答えはなかなか出ず
だからこそ筆記具は奥深く面白いのですが
私個人は手にした時に心躍る
そんなペンが好きです
手にするとき文字を記すとき
また、それをペンケースへ戻すとき
指先から伝わる感触に
心が弾みわくわくするような高揚感
心躍ると言いましても
感じ方は人それぞれかとは存じますが
心躍る筆記具という存在を共感いただけたらと
そんな思いで文章をつづっております
季節の移ろいとともに
手元に置く筆記具も
少し雰囲気を変えてみたくなる今日この頃
本日は
数あるヴィンテージ万年筆の中でも
ひときわクールで
鋭い輝きを放つ一本をご紹介いたします
その近未来的なフォルムは
誕生から40年以上経った今もなお
色褪せることがありません

並木良輔氏が北海道の天然イリドスミン鉱石から
ペンポイントの加工に成功したのが
1914年(大正3年)
以来パイロット社は
日本初の純国産14金ペンを完成させ
現代の「フリクションシリーズ」に至るまで
常に独創的なアイデアと
高い技術で業界を牽引し続けてきました
「カスタム」など
自社一貫生産の質実剛健な製品づくりや
「ラッカナイト軸」以来の漆塗りなど
多くの魅力的なラインナップを持つ同社ですが
1970年代その技術力が
一つの「極北」に達したモデルが存在します
それが今回ご紹介する
「ミューレクス(MR-500SS)」です
通称「ロングミュー」とも呼ばれる、
1977年(昭和52年)に発売されたモデルです
継ぎ目のない「一体型」の美学
このペンの最大の特徴はなんといっても
「首軸とペン先が一体化している」ことでしょう
首軸とペン先が一体化している――。
言葉にすれば単純ですが
硬いステンレス材でこれを行うには
「深絞り加工技術」や「サイドカット法」といった
当時のパイロットが誇る
高度な金属加工技術の粋が必要でした
このペンの系譜を語る上で外せないのが
1971年(昭和46年)に発売され一世を風靡した
ショート軸万年筆「ミュー701」です
一枚のステンレス板から成形された
流れるようなラインは
まさに「機能美」の結晶でした
そのモデル名は
ペンシルロケットからはじまった国産ロケット計画
「ミューロケット」から命名されたといわれています

「ミュー701」と比較されることが多く
中古市場では少し影に隠れがちな
ミューレクスですが
実は単なるリサイズ版ではありません
その流れを汲みつつ
より実用的なロング軸としたモデルで
抜本的に再設計された
ミューの「王者(REX)」といえます
まず目を引くのが首軸に刻まれたリブ加工です
ブラッシュ仕上げのミュー701に対し
ミューレクスには等間隔に溝が刻まれています
これにより
ステンレスボディ特有の滑りやすさを解消し
長時間の筆記でも
安定したホールド感を実現しています

またクリップのデザインも秀逸です
天冠からスッと伸びる直線的なクリップは
バネが仕込まれた可動式
ポケットや手帳に挟む際の実用性も
しっかりと考えられています
※レディは固定式クリップ
クリップを含め全体が曲線的なミュー701に対して
スパッと切り落とされた天冠と尻軸
そして平面が強調されたペン先
直線的で非常に無駄のない硬質なデザインです
当時の定価は5,000円
翌1978年(昭和53年)に発売された金ペン
「グランディ トモ」が
7,000円(のち10,000円)であったことを考えると
学生からビジネスマンまで、誰もがガシガシ使える
「実用品」として製造されていたことが伺えます
また同年にやや小型の赤いライン入り
「レディ」も発売されています


※ヴィンテージ品としての注意点※
70年代から90年代にかけての
パイロット製品の一部(本モデル含む)には
多くの個体にペン芯に漆が塗られています
その目的は定かではありませんが
これらは超音波洗浄機には絶対に入れないでください
漆に細かな気泡(ブリスター)が生じ
二度と元の姿には戻りません


一体成型のステンレスペン先、
書き味は、見た目の通り「硬め」です
「しなり」とは無縁で
筆圧をかけてもびくともしません
柔らかな金ペンのしなりとは対極にあるものですが
その安定感は素早くメモを取りたい時や
手帳への細かな書き込みには最適で
字幅は細字か中字のみで
いたって実用的なラインナップです
現代のペンと比較すると軸径も比較的に細く
ポストをしても
やや小ぶりに感じるくらいのサイズ感ですが
日本人の手によくなじむ持ちやすい軸です
ステンレス製の万年筆を
どこまでも追求した実用的な工業製品
当時の日本の技術水準の高さが生み出した
「鉄ペン」と呼ばれるスチールニブの完成形の一つ
と言っても過言ではないでしょう
上から順に
復刻のミュー90
オリジナルのミュー701
ミューレクス
私自身は金ペンこそが万年筆という
気持ちがある古いタイプの人間ですが
しかしこのペンにはステンレスだからこそ
よいのだと思わせる何かがあります
あくまで実用のためにそぎ落とされた
筋肉質な工業製品としての美しさ
これこそが
このペンを手にして書いた時に感じる
「心躍る」瞬間なのかもしれません

1980年代前半に
廃番となってしまったミューレクス
しかしその先進的なデザインは
現代のプロダクトデザインと比較しても
全く見劣りしません
むしろ今の時代だからこそ
愚直なまでの「ものづくり」が新鮮に映ります
そんな「ステンレスの傑作」を
ぜひ一度お手にとってご覧ください
そのペン先を紙に走らせる時には
かつて世界を驚かせた「Made in Japan」の実力と
ものづくりの匂いを感じられるかもしれません

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今回紹介した”ミューファミリー”のように
今となっては
とても入手困難なモデルも
キングダムノートなら中古での出会いが叶います
まるで宝探しのように
毎日の中古新着をぜひお楽しみくださいませ
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