2016年にパイロット本社が一時移転し、ペンステーションが閉鎖されたのも記憶に新しいかと思います。
建物の老朽化、規模の拡大など様々な理由で社屋移転が行われますが、
今回ご紹介する万年筆は1989年に京橋から五反田に本社移転が行われた際に、
記念に製作された非売品の万年筆です。
パイロット 新社屋落成記念 平蒔絵 宝相華
この万年筆に用いられている「宝相華」とは唐草文様の一種で
牡丹や蓮、柘榴などの実在の植物の組み合わせで表現した空想的な花文のこと。
めでたいことや幸いなこと(=吉祥)のモチーフとして用いられるそうです。
1989年の本社移転は事業の多角化とともに社名を「株式会社パイロット」に変更したのと同時。
まさにこれからの発展を目指しての移転だっただけに、宝相華というモチーフはぴったりですね。
ベースはデラックス漆の旧型。現行とは異なる、3本の溝が切られたクリップが愛らしいです。
そしてしっとりとした漆軸特有の手触り。
細身ですが吸い付くような漆独特の手触りのおかげで持ちにくい、書きにくいということはありません。
※ちなみにデラックス漆は黄銅に漆が施されているのでこちらの注意点とは無縁です。ご安心を。
またこの万年筆、よく考えられているなーと思うのが蒔絵の施されている位置と範囲。
キャップを後ろにポストする際に蒔絵部分が傷つかないようにデザインされているのです。
キャップポストしないと少々短めの万年筆ですから、
記念品であれきちんと使うことを考慮しているのはさすがパイロット。
ペン先は汎用性の高い中字。
軸も時代を考慮すると綺麗な状態を保っています。
非売品の社屋移転記念万年筆、貴重な一本ですよ!
ではでは、今回はこのへんで。
皆様の素敵なペンライフの一助となりますように。