セーラー万年筆 長刀研ぎ
広島県呉市に工場を構えるセーラー万年筆(以下、「セーラー」)は、
1911年の創業以来かわらず広島の地で万年筆を作り続ける日本を代表する万年筆メーカーの一つです。
「ふでdeまんねん」や「シャレーナ」などの独創的かつ斬新な製品を多く出しているメーカーですが、
その中でも、セーラー製品の代表格といえるのは「長刀研ぎ」ではないでしょうか。
まず、長刀研ぎペン先の由来について、
いくつかの記載が見つかりましたので、ふたつの文を引用します。
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長刀研ぎ
長刀(なぎなた) 研ぎは、セーラー万年筆の創業当時からの伝統のある研ぎ方。
海外のペン先は欧文用に丸く研がれていることが多い。
これに対し長刀研ぎは、日本の漢字、筆文化に合わせて、とめ、はね、はらいペン先加工がきれいに書けるように長刀の形状に研ぐ。
長原宣義氏が入社した頃に腕利きの職人であった小山郡一氏に見込まれて、研ぎ方がしっかり伝承されていた。
長刀研ぎは昭和30年代の大量生産とオートメーション化とともに一旦姿を消すが、熱く求めるユーザーに向けて長原宣義氏は長刀研ぎを続けていた。
1990年代以降、万年筆クリニックなどで長刀研ぎは全国的に広まり、今では味わい のあるサインが書けるということで海外でも大人気 数多くの定番モデルにも取り入れられ、最高の書き味を誰でも堪能できるようになった。
※参考文献『趣味の文具箱 Vol.6』枻出版社,2007年,p.32より
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「前略)1991年頃、お客様の声を参考に「斜めにしても書ける万年筆」を目指し、
長原宣義氏が創業当時の研ぎ方をさらに改良する形で、現代の長刀研ぎとして復活させました。」
※参考文献 セーラー万年筆公式サイト「長刀研ぎ万年筆」,https://sailor.co.jp/product/10-7111/,閲覧2023年4月29日より
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これらの引用文献からもわかるように、
長刀研ぎと言われるペン先は、長原宣義氏が一人で生み出されたというよりは、
以前より伝承されていた研ぎ方を、長原宣義氏が独自に昇華したものと考えられます。
その後「長刀研ぎ」を端緒に、「クロスポイント」や「コンコルド」など、
独創的な特殊ペン先が長原氏によって数多く生み出されていきます。
その特殊ペン先のお話は、また次の機会に掘り下げてブログにしてみようと思います。
さて、現在では長刀研ぎペン先の特徴は、
通常品と比べて長く大きなペンポイントと刀のような独特な形状が思い浮かび、
縦横の描線が大きく異なることによるとめ、はね、はらいが挙げられるかと思います。
セーラー万年筆 通常ペン先 中字
セーラー万年筆 長刀ペン先
しかし、一口に長刀研ぎといっても様々な形状の長刀研ぎが存在しています。
1991年頃の「復活」から現代にいたるまで、さまざまな試行錯誤が行われてきており、
いわゆる旧型の長刀研ぎは、
現行品と比べエッジが立っていない少しごつごつとしたペンポイントが多い印象で、
書き味や筆跡でも現行品とはまた違う魅力があります。
いずれも正確な年代は不明ですが今回は旧型デザインの長刀研ぎペン先と、ひとつ前の現行品の長刀研ぎペン先の計3点を紹介します。
画像では分かりづらい点があるかとは思いますが、
それぞれの長刀研ぎペン先の個性について、少しでもお楽しみいただければ幸いです。
旧型デザインの長刀研ぎペン先
ひとつ前の現行品の長刀研ぎペン先
※2023年5月現在、長刀研ぎペン先は受注停止中。在庫のみとなっております。
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